商業施設施工の現場監督とはどういう仕事か

筆者は、商業施設設計施工の中小企業で6年ほど働いた経験があります。
設計施工とは名ばかりで、受注する仕事はほとんどが工事の請負だったので、僕も業務もほぼ施工管理・現場監督の仕事でした。
一般的には内装工事と言われる工事です。では、内装工事の現場監督の仕事はどんなことをするのでしょうか。

内装工事と内装仕上工事

内装屋と言い方をする職人さんがいます。
彼らは、内装仕上工事の職人さんです。主に、壁紙貼りを行う職人さんです。床の塩ビタイルを貼る職人さんもいます。彼らの仕事は内装仕上げ工事です。

内装工事とは、建築以外の工事を行います。
電気・水道・換気・空調なども設備工事、軽鉄・大工・家具・石・タイルそして内装仕上げ工事、これをすべて取りまとめて行うのが内装工事です。大手の内装工事の企業といえば、乃村工藝社や丹青社など聞いたことある方もいるでしょう。
商業施設の施工期間は、内容によります。
簡単なリニューアルであれば2〜3日で終わらせることもあれば、新築の現場では2〜3ヶ月かけて工事に入ることもあります。
また、新築の工事現場では、C工事として扱われます。

A工事 B工事 C工事とは?

例えば、イオンモールのような複業型商業施設をゼネコンが工事を請け負っています。
ゼネコンは、建物とそれに伴う電気・空調・水道などの設備を建設します。これがA工事です。
商業施設なので、もちろんテナントが入ります。そのテナントから直接工事を請けて、ゼネコンが管理する新築現場内でテナント工事を行うのがC工事です。
そして、B工事というものもあります。B工事は、ゼネコンの業者がテナント内の工事を行うことです。費用はテナント持ちになります。例えば、電気や水道などの設備をB工事が行うことがあります。

A工事:建築物側の工事(主にゼネコンなどの総合建設業が行う)
B工事:テナント側の工事だが、建築物の一部として総合建設業側が行う。費用はテナント持ち
C工事:テナントから工事を請け負った内装業者の工事

C工事として工事に入る場合は、建築工事全体のスケジュールが決まっています。ゼネコンの建設に合わせたスケジュールのため、比較的余裕があります。
しかし、路面店での施工期間は、テナントが主導権を持つため、なるべく短い施工期間での要求となります。

路面店の新規施工期間?

路面店で新規のお店を施工する場合の施工期間は、30日〜60日。
店舗の広さ、スケルトンの有無、夜間の工事不可などの条件により変わります。
スケルトンとは、その言葉のままで、そのテナント内になにもない状態です。壁も天井も剥がされて、電線や水道・換気設備などもすべて取り払われた状態です。スケルトンにして、ようやく墨出しができるようになります。
居抜きのままの店舗から工事を始める場合は、解体工事を行い、スケルトンの状態に戻さなければなりません。解体工事の期間分、施工期間が長くなります。

現場監督って何するの?

未経験の新人は、現場では一番の下っ端として扱われます。
「人夫のように働け」
とよく言われました。
掃除・ゴミ出し・職人さんの納品の手伝いなど、とにかく一日中現場の片付けをしています。職人さんが作業する場所に物が置いてあれば、それを違う場所に動かすのも現場監督の仕事です。
壁にタイルを張る作業を行わなければなりません。しかし、壁の前に照明器具が大量に置かれていて、このままだとタイル張りの職人さんは作業ができません。この照明器具を動かすのはタイル職人さんの仕事でしょうか?
違いますよね。電気屋さんが動かしてくれなければ、現場監督が動かすしかないんです。
こんな仕事を一日中続けて、いかに職人さんが働きやすい環境をつくるのか、これが現場監督の仕事の一つです。

また、現場監督らしい仕事といえば、「墨出し」です。
図面を元に、現場に壁の位置などを書き込んでいきます。この墨出しが間違えていると大変なことになる、とても重要な仕事です。

現場が進んでいくごとに、後工程の業者を呼んで、現場で打ち合わせ、発注します。
この発注時に寸法を間違えれば、作り直し、現場で修正、そして納期が遅れていきます。
忙しくなってきたら、今度はいろんなお客様から電話がかかってきます。
中小企業の施工会社の社員は、現場だけ観てればいいだけじゃなくて。実は、営業・積算・営繕など、または設計の仕事なども一人で行っているんですね。

優秀な現場監督とは?

現場監督の主な仕事はマネジメントです。
職人さんたちをいかに気分良く、モチベーション高く、効率的に仕事をしてもらうかで、店舗の仕上がりや施工期間に影響してきます。
人間同士のぶつかりあいです。
発注者側だからといって、職人さんなどの協力業者を上から目線でこき使うと、言う通り動いてくれません。下手に出過ぎても舐められます。

パートナーとして、お互いを認めう信頼関係の確立が大事です。
とはいえ、毎回初対面の人もいるため、現場に自分の味方を何人作れるか。
それにかかっていると思います。

僕が入った施工会社はブラック企業だったので、未経験の僕をいきなり現場に放り投げました。
右も左もわからず、職人さんたちの言っている意味もわからず、本当に悔しかった。
その時の話を振り返ってみます。

はじめての現場で悔し泣きした話

「どうして、こうなった・・・?」

僕は、ラブホビルに囲まれた新大久保にある公園の一角で涙を流していた。
よくわからないけど、悔しかった。
僕は、社会人の壁にいきなりぶつかったのか?

そのとき僕は、新大久保の区役所通り沿いに小さなカラオケ店を作っていた。
厳密に言えば、カラオケ店を作っているのは職人さんだ。
僕は現場監督だった。

現場監督…現場責任者
訳もわからんまま上司もなしでいきなり現場に放り込まれた。
現場の納め方なんてまるで知らないのに、職人さんは
「監督さん、ここどうすんの?」
「ねぇ、監督さん。」
「監督さん、監督さん」


「わかるわけねーだろっっ!!!」

って叫びたかった。
僕は、社会人になって3ヶ月たったばかりの新人だ。
でも、会社に信頼されて現場を任されている。少なくとも、僕はそう思っていた。
わからないときは、他の現場にいる上司に電話して聞いてみる。

あぁ、この上司がまたどうしょうもないやつだ。
チェーンスモーカーで、40代だというのに、歯がほとんどない。
口元だけみれば、80歳の爺さんだ。
また、チェーンスモーカーだからとにかくクサイ、半径1メートルに近寄れば常に悪臭が漂っている。

仕事の態度もそうだ。
たまに、その上司に呼び出されて、上司の現場に言ってみれば
「おお、監督さん!!Uさんどこ行ったの?」
って聞かれる始末。
行き先は分かっている。

近場のゲーセンだ。
あのオッサン、現場を抜け出しては、オンラインの麻雀ゲームにハマっている。
本当にどーしょうもねぇ、大人だ。

反面教師とはまさにこのことで、
「こんな大人には絶対なりたくない!!」
って思わせてくれた。
まぁ、経験値だけはあるから、仕事はそれなりに知ってる。

って、そんな上司に電話する。
なんとなく、アドバイスをもらう。

アドバイスをもらったところで、現場経験ゼロの僕にとっては、全てを理解することは出来ない。
しょうがないから、職人さんと電話で直接話してもらう。
だいたい、それで話はつく。

この現場もそれほど広くない。カラオケ店だ。
全部で10部屋もない。

こんな小さい店でも、未経験で現場に投げ出されたら管理しきれるわけがない。
未経験とはいえ、たくさんの大人にバカにされ、若造扱いされて、何も言い返せない自分が悔しかった。
悔しくて泣いたのは生まれてはじめてかもしれない。

この現場は結局うまく納まらなかった。
引き渡し1週間前から現場に泊まり込み、心も体もボロボロになった。

でも、うまくいかなかった。
しかも、この現場の利益がなかった、ということで給料5万円引かれた。
見積もりをしたのは僕じゃないのに・・・。

あぁ、泊まり込んだ残業代?経費?
出るわけない。

唯一の救いはあった。この僕の姿に顧客の専務が感動してくれたこと。
専務は、その後も僕に良くしてくれた。新規の店舗工事があるときは、必ず声をかけてくれるようになった。

現場監督の収入

僕がこの会社に入ったのは
「インテリアデザイナー募集」
の求人を観て入ったのでした。しかし、実際にはほとんど現場監督・・・。
たまに設計の仕事をしましたが、実務とは言えないレベルでした。

ただ、収入面でデザイナーと比べると、現場監督の方が収入が良いようです。
入った当初は16万でスタートでしたが、3年後くらいには額面で30万円を超えていました。
ただし、労働時間が1日15時間くらい働いていたので、時給換算するとあまり高くはなかったです。

また、現場仕事なので、体力が必要です。30代くらいまではいいですが、40代を超えると肉体的にキツくなってきます。
健康面の代償を収入としてもらっているようなものです。
また、動かす金額が大きく、店舗でも1億を超える工事があります。
顧客や会社からのプレッシャーが大きくて、精神的にも疲労します。そうなると、30万円程度では割に合わないと感じてきます。

ただ、うちの会社はかなり厳しかったですが、バックマージンをもらっている現場監督もいるようです。そうやって小遣いを稼げば割に合うかもしえません。

現場監督のやりがい

現場監督のやりがいってなんだろうか。
一つは、独立が目指せることですね。営業先の見込みがあれば、独立して多くの収入を得ることができます。
年に、合計1億くらいの案件を回せれば、自分の年収を一千万円以上にすることも見込めます。
実際に、僕は毎年1億くらいの工事を担当していました。しかし、社員なので会社経費など引かれて、実際の収入は粗利の半分以下しか手元に入ってきませんでした。でも、自分で工事を請け負えば、かなりの額を手元に残すことが可能になります。
なので、将来の独立を目指して、一人前になるまで現場監督として働くことはモチベーションの一つになります。

もう一つのやりがいは、引き渡し時の達成感です。
お客様が喜んでくれるお店ができたときは達成感があります。
もちろん、上に書いたようににお客様に満足してもらえなかったり、モメてしまうときもあります。
動く金額が大きいですから、責任というプレッシャーも大きいです。
ですが、それを乗り越えて本当にいい店舗が出来上がったとき、お客様に喜んでもらえたときの達成感。
そして、「やっと休める」という安堵感。
無事にオープンできたら、協力業者を集めて「打ち上げ」です。お互いに嫌な思いをしながらも、一つのものを作り上げたあとの「絆」を感じる瞬間です。

まとめ

新国立競技場のゼネコン現場では、新人現場監督が自殺するという事件が起きました。
現場監督はそれだけプレッシャーがかかっています。
内装工事といえども、飲食店ならすぐに1000万円以上の案件になります。
もし、顧客が個人だったら何十年もサラリーマンとして働いて、ようやく貯まったお金で飲食店を開業するという人もいます。
動かす金額が大きいだけに、現場監督の背にかかる責任は重大なものです。
また、工事中に火事や職人さんが怪我をしたり、というリスクも管理しなければなりません。もちろん、工事中は近隣住民にも迷惑をかけるわけで、
「責任者だせ」
と言われて出ていくのは現場監督です。ヤクザがやってくることもあります。

人間関係・責任・プレッシャーへの耐性、現場監督に問われる資質は多いです。また、長時間労働で肉体を酷使します。
現場監督は収入という見返りが多くなければ割に合わない仕事と言ってもよいでしょう。

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